2014年9月26日金曜日





イスラエルで仕事をした後に、Ramon Craterという大きいクレーターがあると聞いたので、仕事場で出会ったイギリス人のJoshとブラジル人の彼女Camilaとそこへ一緒に行く事になった。情報集めは何もしていなかったが、Joshが一週間前に行ったときの感じだと、宿も予約しなくて良さそうだ。

Boaz(ファームのホスト)の車に揺られ、バス停まで向かう。景色は相変わらず一面砂漠だ。バス停に着きBoazと別れた後、ベンチに座りバスを待っていると、兵隊さんたちが1mくらいあるであろう大きな銃を肩からさげてやってきた。イスラエルでは街中でもごく普通の光景だ。銃をほほーうと眺めていると、彼らもこちらをちらほら見てくるのに気がついた。「訓練で疲れているから座りたいのかな、譲ってあげようかな」なんて考えているうちにそのうちの一人が「ベンチの下に蛇がいる」と言い出したので、そこにいたおばさんもみんな一緒にうわあああと立ち上がりその場を撤退した。白と黄色の綺麗な蛇だった。


クレーターのある村に着き、宿へと向かう。天気は相変わらずカラッとしていて、ジリジリと強い日差しを感じる。

宿は丘の上にあった。入り口を抜けると広々とした空間になっている。大きな吹き抜けのテントがいくつかあり、その下にはマットレスが大胆に置いてある。50人くらいは泊まれそうなキャパだが、見たところ誰もお客はいなさそうだ。




「やあ、こんにちは」左側から坊主刈りの男が話しかけてきた。イスラエル人のラムだ。身体はスラっとしていて落ち着いた雰囲気が漂っている。彼はここで住み込みのボランティアをしていて、宿の受付と管理を任されている。この仕事を初めて2週間ほど経つそうだ。ここの宿には電気が通っていない。電気がないのでもちろんインターネットも通っていない。お客さんが特にいるわけでもなく、仕事が忙しいわけでもなさそうなので、「この仕事に飽きたりしないの?」とすこし経ってから尋ねてみると、「毎日が訓練なんだ。小さな仕事だけど、この宿を任されている事には変わりないからね。それに、インターネットなしの余計な情報が入ってこない環境の中で過ごすと、嫌でも自分と向き合わなきゃいけない。それは簡単なことじゃないし、すごく勉強になるよ。ここは何もないところかもしれないけど、僕にとっては毎日が学びなんだ。」とラム。なるほど、ふむふむ。面白い人だなあーと思い、話を続けた。


「旅を始めてからもうずいぶんと時間が経つ。若い頃は体力があったからね、肉体労働でたくさんお金を貯めたんだ。それからインド、ネパールとかその辺の国を回ってきた。特にインドは自分の”HOME”だって感じたよ。瞑想を学びたくて、3ヶ月間ヨガ漬けの生活を送った。そしたら、それから世界が変わって見えるようになった。自分の中のエゴとか欲だとか、そういう汚いものが減ってきたんだ。それからは毎日瞑想を続けて、もう今は、物理的には何も無くても満足できるようになった。ほら、僕なんて家も無いし、荷物だってバックパック1つだけ。けど、これ以上のものはいらないよ。そう思える事はありがたいよね。」
ふいに、ショッピング袋を両手に持ちながらも必死に買い物をしている日本人がパッと頭に浮かび恥ずかしくなると同時に、自分が彼の話に引かれていくのがわかった。




"Poor people are those who only work to

 try to keep expensive lifestyle,
and always want more and more"

「貧乏な人は、少ししかモノを持っていない人ではなく、

無限の欲があり、いくらモノを持っていても満足しない人たちのことだ。」

by Jose Mujica

少しお茶をした後、彼は「いってらっしゃい」とクレーターへ向かう私たちを優しく送り出してくれた。


クレーターに向かい歩いていると、驚く光景に出会った。「で・・でっかい!」でっかい角のあるライオンキングにでもでてきそうな動物がうようよいたのだ。しかも街中!道路のすぐ横!アイベックスという動物、ヤギの仲間らしい。見慣れない動物なだけに興奮した。見た目は、角が大きくちょっと恐いが、大人しく草を食べている。その仕草はとても愛らしかった。






Ramon Crater


















 巨大なRamon Craterは突然目の前に現れた。クレーターのあたりは風が強く、暑さを忘れさせてくれる。 よく見ると、クレーター上に車が走っているのが見える。ほんとうにちっぽけで、アリみたいだ。全体を見渡すと、崖をゆっくりと慎重に降りていくアイベックスが目に入った。踏み場を見事に見分けながら、進んでいく姿はたくましい。人間なんてどうせロープを使わないと、あんなとこ降りれやしない。ロープがあっても勇気がないと無理かも。彼らは水を求め、命の危険をおかしてまでも崖を下っていく。ただただ本能に従って。恐いからといって、逃げもせず、シンプルに本能に従って生きている。美しいなと素直に思った。




宿へ帰ると、ラムが温かく迎えてくれた。キャンドルの灯りが部屋を温かく包んでいる。キッチンに入ると見知らぬ男の人がいた。彼もどうやら今夜はここに泊まるようだ。挨拶をし、テーブルを取り囲んだ私たちに、ラムはインドのチャイティーを入れてくれた。いやーあれは美味しかった。みんなで団欒を楽しみ、時間はあっという間に過ぎた。JoshとCamilaがその場を離れたあと、私とドイツ人の男の人とラムは外に出た。風が心地よく、気温も完璧だ。電気もなく真っ暗なため、星空が息をのむほど美しい。





 星空を見上げながら、彼はぽつりと話を始めた。
「この国には悲しい出来事が多すぎる。長年の戦争に疲れたよ。僕はただただこの国に”Peace”が訪れてほしい。」
「人の殺し合いなんて馬鹿げている。今の若い人はみんな旅に出るようになったからね、そうやって世界の雄大さを自分の目で見て身体で感じてほしい。戦争なんて愚かな行為だって、より多くの人に気づいてほしい。」

ラムは、戦争ばかりのイスラエルが嫌いで海外へ旅に出たこと、帰ってきてからイスラエルの美しさに気づき、今は全国を歩いて旅している最中だと言う事などを話してくれた。

「僕は宗教を信じない。自分の道をゆくってとこかな。」

「ユダヤ教で本当にあかんと思うのは、選民思想だね。いくら旧約聖書に書かれているからって、自分たちだけが選ばれた存在・特別な存在だなんて間違っているよ。どの民族、人種も美しい。みんな人間は人間でしかないんだよ。みんな同じさ。」

彼の言葉に少しほっとした。実は、ユダヤ人の選民思想をイスラエルに来てから少なくとも感じていた。自分たちは選ばれた存在だと言われてもあまりいい気はしない。自分は神に選ばれた存在というその選民思想は、人種差別にも繋がりやすく少し危険に感じる。パレスチナ問題でもこんなに長く戦争が続いているのは、選民思想を持ち、自分の集団以外を排除してもよいと考える過激派が少なくともいることが影響しているだろう(もちろんそんなに単純な話ではないが)。ラムは、戦争のことでも考えていたのだろう、彼の顔が少し悲しく映った。

「流れ星ってよく見えるの?」ふと、聞いてみた。

「え、さっきから何回か流れてるよ。」ケタケタと笑う彼。「え、ずるい!」私は追いつこうと、星空にアンテナを張った。すると右手の方に動くモノが見えたので「あっ!」と叫ぶと、ラムも「あっ」っと同時に叫んだ。

・・・・・・・

「今のは大きかったねえ。」ラムはそう言った。

その流れ星だと思ったモノは緑と赤の光を放って落ちていったのだ。そう、それはミサイルだった。私は口をぽかーんと開けていた。なんと言ったらいいのか分からなかった。あの辺には軍の基地があるから練習だよ。大丈夫大丈夫。「いやー、それにしても大きかったねえ。」彼は何度もそういった。彼自身も少し驚いているようだった。




"It takes solitude, under the stars, for us to be reminded of our eternal origin."


Archibald Rutledge



Ramon Craterへ〜イスラエル編〜

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