ゴミ箱は宝箱?ダンプスター・ダイビングとは。
タイトルを見て驚いた人もいるでしょうが、ノルウェーでの留学中、私はゴミを食べて生活していました。とは言っても腐っていたり、汚れているものを食べていたわけではありません。衛生的に悪いものではなく、包装紙やラップに包んであるもの、缶詰などをスーパーのゴミ箱から漁って利用していました。多くは、賞味期限切れで捨てられた食材でしたが、驚くことに賞味期限が一年以上先の缶詰なども含まれていました。野菜はそもそも消費期限がついていないし、自分の目で食べられるかどうかを判断すればいいのです。
このように、廃棄物をゴミ箱から拾ってきてそれを利用する行為は、ダンプスター・ダイビング(Dumpster Diving)と呼ばれています。回収するものは食品に限りません。日常用品や、家具なども含まれます。ヨーロッパやカナダ・アメリカでは盛んに行なわれており、中にはダンプスター・ダイビングで拾ってきたガラクタを修理してリサイクルショップで売る人もいるそうです。
一見、ホームレスなどの貧困層が行なっているのではないかと思われがちですが、実際は中産階級の人が多く、職業を持つ人がほとんどです。
ダンプスター・ダイビングをしている若者たち
フリーガン、という生き方
では、何の為に行なっているのでしょうか?
もちろん、経済的には食費が浮くという利点もありますが、ただそれだけではありません。
ダンプスター・ダイビングは、社会運動の一つであり、フリーガニズムと呼ばれるライフスタイルに基づいています。 フリーガニズムとは、「フリー(無料・自由)」と菜食主義を目指す(ビーガン)を掛け合わせて作られた造語です。フリーガニズムを実践している人々はフリーガンと呼ばれ、彼らは大量生産・大量消費・大量廃棄型の社会を批判する立場から、廃棄物の回収・再利用を生活の一部に取り入れ、無駄を減らしていこうといった考え方を持っています。さらに、倫理的・非人道的な事業を行なう企業や環境破壊、動物虐待に結びつく商品の購入を出来るだけ控えるということも一つの目的となっています。
悲しいことに世界では飢餓で苦しんでいる人々が存在する一方で、先進国では毎年大量の食品が捨てられています。
国連世界食料計画によれば、現在世界でおよそ8億500万人の人々が、健康で活動的な生活を送るために必要な栄養を摂取できていない。その一方で、毎年廃棄される食料は13億トンにものぼり、この量を半分に減らすだけで、世界中のすべての人に食事が行き渡る、と報告されています。
先進国に運ぶ食料のために、生産の段階で大量の化学肥料や農薬が使われ、運送でも燃油が過剰に利用されます。どれだけ無駄なエネルギーが利用され、地球環境に負担をかけているのでしょうか。
フリーガニズムは、こうした現在の大量生産・大量消費社会へのボイコットであり、意思表示の手段の一つであるとも言えます。
環境問題は、規模が大きく様々な問題が絡み合っているゆえに非常に把握しにくいと言えます。さらにその情報は、無味乾燥な言葉や数字として訴えかけてくるので、実感しにくく、それに基づいた行動も理性を必要とします。
環境を身近なものとして捉える
環境問題は、規模が大きく様々な問題が絡み合っているゆえに非常に把握しにくいと言えます。さらにその情報は、無味乾燥な言葉や数字として訴えかけてくるので、実感しにくく、それに基づいた行動も理性を必要とします。
正直私も「食べ物がもったいない」という単純な理由から始めてみました。しかし、この活動をしていくうちに、信じられないほどの量の食べ物が捨てられているということを身にしみて感じ、現在のフードシステムに疑問を持ち始めました。私は東京生まれ、東京育ちの身なので、大量消費の生活に慣れて育ってきましたが、今までどれだけ自分が受動的に、そして無意識的にモノを買ってきていたのかを思い知らされると同時に、「消費のあり方」を考え、「意識的な買い物」をするようになりました。
Nord大学の生態学の講義で、教授が言っていた印象的なメッセージがあります。
「君たちは、先進国という豊かな国に生まれてきていて、消費者として商品を選ぶことができる立場にいるんだ。商品を買うということはその企業をサポートするということ。自分一人の力なんてたかがしれていると思うかもしれないが、そんなことは全くなくて、募金をするよりもずっと効果的な意思表示なんだ。企業は消費者がいてこそ成り立つんだからね。その自覚を持って日々行動してもらいたい。」
環境問題、貧困問題、なんだか難しい話のようですが、一人一人のライフスタイルの小さな変化こそが社会に変化をもたらすのではないでしょうか。そんなことを考えさせてくれる契機となったダンプスターダイビング。賛否両論あると思いますが、「消費のあり方」を考えるきっかけになるのではないでしょうか?
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留学中ゴミを食べて生活していたって話【ノルウェー留学】
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